夏休みの宿題の定番、読書感想文。

- どんな本を読んだらいい?
- 読みやすくて書きやすい本は?
- どうやってまとめたらいい?
などなど、毎年頭を悩ませていた方も多いはず。
実は、読書感想文の書き方にはちょっとしたコツがあるのです。
この記事では、現役ライターが考える読書感想文の書き方を、前後編に分けてご紹介していきます。
まずは前編!読書感想文が書きやすい本の選び方と、テーマ別でおすすめの厳選作品を紹介します。
- 読書感想文が書きやすい本の選び方がわかる
- 読みやすく書きやすいテーマ別のおすすめ作品がわかる
- 作品ごとに書き方のヒントがわかる
読書感想文が書きやすい本の選び方
どの本を読んで読書感想文を書くか、悩みますよね。
どうせならすらすらと感想文が書ける本を選びたいもの。
そんな本選びのコツをご紹介します。
コツ① 面白い本と感想が書きやすい本は違う!
まずは面白い本、夢中で読める本と、読書感想文が書きやすい本はイコールではないと認識しましょう。
- 冒険モノ
- ファンタジー
- ミステリー/推理小説
上記のようなジャンルはわくわくハラハラする展開で読みやすく人気があります。
しかし、意外と感想文が書きにくかったりするもの。
夢中で読んで、気づいたら「あー面白かった!」以外の言葉が出てこない、なんてことも考えられます。(もちろんそれも素晴らしい読書体験ですが)
今回はあくまで読書感想文が書きやすい本に絞って読んでみましょう。
コツ② 自分が興味を持てそうな本、共感できそうな本を選ぶ
感想文を書くコツは、ズバリ自分語り。
読書を通じてこれまでの自分の経験や考え方を書くと書きやすく、あらすじ紹介ばかりの感想文にはなりません。
物語と自分をいかにリンクさせるか。
そのためには自分の興味がある分野や共感できそうな設定の物語を選びましょう。
たとえば、部活をしている人は同じスポーツや活動をテーマにしたものを。同じように、犬を飼っている人は犬がテーマの物語やノンフィクション。
あとは主人公が自分と同年代の物語もおすすめです。
共感できたり、自分に置き換えて考えられる内容だと読みやすく、感想も書きやすくなります。
コツ③ 急がば回れ!?実は短編集より長編がおすすめ
読書が苦手な人はすぐに読み終わる短編に手が伸びてしまうかもしれません。
しかし実際にはテーマやエピソードが絞られすぎて、感想を膨らませるのが難しかったりします。
なのでそこまで分厚くない長編や連作短編集、1冊に2作程度の中編集がおすすめです。
- 「面白さ」よりも「書きやすさ」で選ぶ!
- 自分語りができそうな内容の作品を選ぶ!
- 長すぎず短すぎない作品を選ぶ!
読書感想文におすすめの本9選!
ここでは、実際に読んで面白かった、読書感想文にもおすすめな作品をテーマ別にご紹介します!
今回紹介する作品のほとんどは、私自身学生時代に読んで、その後何度も読み返すほど好きな作品だけを厳選してみました。長すぎず短すぎず、読みやすい作品ばかりです。
それぞれこういう視点なら書きやすいのでは?というポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
共感できる!等身大の学生が主人公のもの
自分と同年代の少年少女たちが主人公の物語。同年代ならではの悩みや葛藤に共感できるところがあるのでは?
自分の場合はこう考えた、だとか、もしも自分がこの物語の登場人物だったらどうしたか?と考えると感想文も書きやすそうです。
夏の庭/湯本香樹実

町外れに暮らすひとりの老人をぼくらは「観察」し始めた。生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。夏休みを迎え、ぼくらの好奇心は日ごと高まるけれど、不思議と老人は元気になっていくようだ―。いつしか少年たちの「観察」は、老人との深い交流へと姿を変え始めていたのだが…。喪われ逝くものと、決して失われぬものとに触れた少年たちを描く清新な物語。
(「BOOK」データベースより)
誰もが避けては通れない「死」という普遍的なテーマを扱っている作品。
「死」を身近に感じたことがある人もない人も、読後にはそれぞれが考えるところがあるのではないでしょうか。

おじいさんと少年たちが徐々にお互いを理解していく場面も、同じように立場が違う人たちと触れ合った経験がある人は共感できるかもしれません。
カラフル/森絵都

生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが…。
「BOOK」データベースより
「死」を身近に感じたことがある人もない人も、読後にはそれぞれが考えるところがあるのではないでしょうか。
ホームステイ先の真は中学生。家庭環境も友人関係もシビアな問題を抱えていました。そして真だけでなく級友も家族もみんな不完全で問題だらけ。

ひとりひとりを多面的に見ていくとみんながそれぞれいろんな色を持っていることがわかります。
胸が熱くなる!スポーツ小説
これまでに何かに打ち込んだことがある人にはとくにおすすめ。
自分のこれまでの経験や考え方と似ているところ、逆に違うところを語ればいい感想文が書けそうです。
今まで夢中になれることがなかった人も、これを読んで何か新しいことに挑戦したくなった!という感想でもとてもいいと思います。
一瞬の風になれ/佐藤多佳子

春野台高校陸上部、1年、神谷新二。スポーツ・テストで感じたあの疾走感……ただ、走りたい。天才的なスプリンター、幼なじみの連と入ったこの部活。すげえ走りを俺にもいつか。デビュー戦はもうすぐだ。「おまえらが競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」。青春陸上小説、第一部、スタート!
「BOOK」データベースより
三部作の1作目で、主人公たちが高校1年生のときの物語。これだけでも完成度が高いのでおすすめ。
私自身高校生のときに読んだのですが、何かに真摯に打ち込む姿勢、夢中になる楽しさ、尊敬、嫉妬、落胆、悔しさ…様々な感情を抱く新二に感情移入しながら一気に読みました。

圧倒的な才能を前に自信を失いかける状況や、親友でありライバルである人間関係も、自分に置き換えて考えられそうですね。
風が強く吹いている/三浦しをん

箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」――純度100パーセントの疾走青春小説。
「BOOK」データベースより
またも陸上がテーマで申し訳ないのですが・・・こちらは箱根駅伝を目指す大学生の物語。
一癖も二癖もある寄せ集めメンバーのこれまでの人生や哲学、悩みが明らかになっていき、惹き込まれます。
リーダーとしてみんなをまとめる立場にある人は、灰二のマネジメント力の面でも感想が書きやすいかもしれません。

余談ですが、こちらも高校生のときに読み、翌年から箱根駅伝に夢中になりました。大学進学の際にも箱根駅伝伝統校を選んだので、ある意味私の人生を変えた作品かもしれません(笑)。
※こういう自分語りを膨らませて読書感想文を書きましょう!
憧れる!お仕事小説
これから社会に出ていくことになる学生のみなさん。
こんな仕事があるんだ!という発見になり、もしかしたら将来の夢に繋がるかもしれませんね。
自分自身こんな経験があったから、この物語/職業のこんなところに興味を持った、という内容だと説得力もありいい感想文になりそうです。
チルドレン/伊坂幸太郎

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。
「BOOK」データベースより
家庭裁判所の調査官の物語。
短編ではありますがそれぞれがリンクしあっており、長編作品のような趣があります。とくに気に入った章で感想を書くとまとめやすいかもしれません。
“子ども(Child)は群れると性質が変わる(複数形がChildsでなくChildren)”というのもなるほどと感じました。そういった集団での友人関係についても書けそうですね。

またも余談ですが、この物語から少年犯罪に興味を持ち、大学では社会学を専攻しました。
本からいろんな影響を受けていると再認識しました。
神去なあなあ日常/三浦しをん

美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。しかも村には秘密があって…!?林業っておもしれ~!高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。
「BOOK」データベース
上で紹介した『風が強く吹いている』と同じ三浦しをんさんの作品。
こちらは林業という、なかなかイメージしにくい職業をテーマに扱っています。
都会っ子の主人公が林業の世界に投げ込まれ、振り回されつつもたくましく成長していく過程は青春小説そのもの。日本の伝統や文化、神々への信仰も織り交ぜられており多面的に楽しめます。

自分が主人公の立場だったらどうなっていたかな?と考えながら読むのも面白いと思います。

WOOD JOB!っていう映画にもなったよね!
あれも明るくて面白い映画だったね~
家族がテーマの作品
家族がテーマの物語は、自分自身に置き換えやすくておすすめです。
ひと口に家族と言っても、夫婦、親子、兄弟、祖父母や親戚、ペットなど形はさまざまです。
卵の緒/瀬尾まいこ

僕は捨て子だ。その証拠に母さんは僕にへその緒を見せてくれない。代わりに卵の殻を見せて、僕を卵で産んだなんて言う。それでも、母さんは誰よりも僕を愛してくれる。「親子」の強く確かな絆を描く表題作。家庭の事情から、二人きりで暮らすことになった異母姉弟。初めて会う二人はぎくしゃくしていたが、やがて心を触れ合わせていく(「7’s blood」)。優しい気持ちになれる感動の作品集。
「BOOK」データベースより
家族にまつわる物語が2作品収録されています。
どちらの物語も世間的に言えば普通ではない家族ですが、血の繋がりだけが家族ではないと思える作品。とくに表題作の母親のまっすぐな愛情に心打たれます。

瀬尾まいこさんの作品は、登場人物にイヤな人がいなくてヘンテコだけど温かい物語ばかりでおすすめ!

映画化された『そしてバトンは渡された』、『幸福な食卓』も瀬尾まいこさんの作品なんだね。
どっちも家族の物語だったね。
重力ピエロ/伊坂幸太郎

兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは―。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。
「BOOK」データベースより
上で紹介した『チルドレン』と同じ伊坂幸太郎さんの作品。
あらすじ内にある“過去の辛い出来事”が本当に辛いし扱うテーマも重いので、読書感想文にはあまり向かないかもしれないのですが…。
ジャンルとしてはミステリーですが、それよりも親子や兄弟、そもそも家族とは?考えさせられる家族の物語。

岡田将生さんと加瀬亮さんの兄弟で映画化もされています。
やっぱりテーマが重いから、同じ伊坂幸太郎さんなら『オー!ファーザー』のほうがいいかも?
課題図書の定番!名作
星の王子さま/サン=テクジュペリ

大切なものは、目に見えない―――
王子さまとキツネの話がとても考えさせられます。
キツネとの別れを悲しんだ王子さまが「こんなに悲しくなるなら仲良くならなければよかった」というようなことを言います。それに返すキツネの言葉がとても印象的。
友達や大切な存在との出会いや別れの経験がある人や、自分にとっての「目には見えない大切なもの」はなにか?を考えてみると素敵な感想文が書けそうです。

私自身は当時、数年前に死んでしまった猫のことを思い出しながら読みました。
まとめ
ここまで、読書感想文が書きやすい本の選び方と、おすすめの作品を紹介してきました。
- 読書感想文ではいかに自分語りをするかがポイント
- そのために自分が興味がある作品や共感できそうな作品を選ぶ
今回紹介した作品はどれも中学生~大学生頃に読み、何度も読み返すくらい気に入っている作品です。
とくに『星の王子さま』は印象的な作品。おそらく小学生の頃に初めて読んだときはピンとこなかったのですが、高校生になって読み返したらとても感動し、それ以来大切な作品のひとつになりました。
そのときどきで感じ方が変わるのも読書の大きな魅力のひとつです。 ぜひ、学生時代という多感な時期にたくさんの素敵な作品に出合えることを願っています。
また、次の記事では読書感想文の書き方のコツをご紹介していきます。 コツがわかれば読書感想文もぐっと書きやすくなりますよ。

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